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2008年8月27日 (水)

ハリー・ポッターと死の秘宝 日本語版への疑問  その2

ハリー・ポッターと死の秘宝 日本語版への疑問
  その2

「ハリー・ポッターと死の秘宝」の静山社の日本語訳。
原書を読むと「なぜ」という事ばかりなのだが、特に目に付くのが原作者ローリングが二つの意味で使っている言葉である。
たとえば、第25章 Shell Cottage(シェル コッテージ)。
この訳は「貝殻の家」。
しかし、Shellはシェルター(英:shelter)という造語があるように単なる貝殻ではない。しかも、Cottageは「別荘。コテージ。」と訳されるように洒落た別荘の様なもの。
確かに貝殻のように白く輝く家に相違ないが、だからと言って「貝殻の家」と訳されると何やら貧相ではないか。
そして、不思議なのは原書で「大文字」なっている固有名詞などが固有名詞扱いしていないこと。
「その1」で示したように「Millamant`s Magic Marquees」を固有名詞として扱わなかったと同じである。
その大文字を無視した部分を示してみる。

第21章 The Tail of the Three Brothersから
(英国版原書p331)
So the oldest brother who was a combative man,asked for a wand more powerful than any in existence: a wand that must always win duels for its owner,a wand worthy of a wizard who had conquered Death!So Death crossed to an elder tree on the banks of the river fashioned a wand from a branch that hung there,and gave it to the oldest brother.

分かりやすくするために、なるべく直訳で訳してみると‥‥‥

「それで、闘争的であった一番上の兄は、存在するどんな魔法の杖よりもいっそうパワフルな魔法の杖を求めた。
常に、その所有者のために決闘で勝たなくてはならない魔法の杖。
「死神」を征服した魔法使いにふさわしい魔法の杖!
それで、「死神」は川の土手のニワトコの木に行って、そこに下がっていた枝から魔法の杖を作って、最年長の兄に与えた。」

ここで、Deathと大文字で書かれると、「死」ではなくて「死神」と辞書には書いてあるし、その様に理解している。
しかし、訳文では『死』なのである。
ここで『死』と訳してしまうと後で出てくる「master of Death」 ‥静山社日本語訳では「死を制する者」が曖昧になる。
「master of Death」とは、死神のマスター(主人)、即ち「永遠の命」ということである。

又、第32章の「The Elder Wand」。
これも一貫して「ニワトコの杖」なのだが、確かに上述の通り「ニワトコ」の枝から作ったものだが、「the Elder Wand」となったら「ニワトコの杖」ではおかしいのではないのだろうか。これもelderとは一般には「高齢者、年長者」の意味だ。
‥‥とすれば、兄弟の年長者の最強の魔法の杖を意味して、単なる「ニワトコの杖」では物語が散漫になる。
しかも、後半では「」も付かないニワトコの杖で表現している。
たとえば、

I`m putting the Elder Wand,‥‥‥

の訳も「僕はニワトコの杖を‥‥」だ。
伝説的なElder Wandはもそんなに軽いものではないと物語を読むと誰でも思うのだが、訳者どう思ったのだろうか。

ちなみに、訳者はあとづけで「児童書」と言い放って、かなり無理な訳も言い逃れする気なのだろうか。
しかし、原書はアダルト版と児童書版とあるのだが、中身は一緒だ。
それにしても、何か日本語訳を読むと全く面白くない。
なんと言っても毎度言うように情景が浮かんでこない。

原作者ローリングは風景を描くとき、この小説に出で来る情景を過去の映画の一シーンの一部を切り取ったような風に書いている。
そんな状況が思い浮かべば、本当にイメージが膨らむものだ。
しかし、平易な日本語文に変えられたら何も分からないと言うものではないか。

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