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2008年11月28日 (金)

素人の博打のババを引かされた日本経済の憂鬱

素人の博打のババを引かされた日本経済の憂鬱

産経新聞は、農林中金の平成20年9月中間決算で「保有有価証券の含み損が3月末の4306億円から1兆5737億円へと拡大。」と報じている。
思えば、昨年「証券化商品への投資残高を7兆円まで拡大」と広言していたとブログ
「低金利。日本金融機関・米国への資金提供の入れ込(2008.7.20)」
で既にエントリーしている。
プログでは触れいてないが、実はサブプライム問題が顕在化して「割安になった証券化商品を買いあさった(読売新聞)」。それも為替リスクを無視してのことだったはず。
又、その後の後追いブログ
「3000億円増資報道・解体か存続か事実上の破綻に近い?農林中金(2008.10.28)」
「3000億円増資報道・事実上の破綻に近い?農林中金 その2(2008.10.29)」
である程度その農林中金という農水省の天下り機関である実態を書いている。
そして今回は、
「財務基盤を強化するため、各地の農協などへ出資を求め年度内に1兆円超の増資計画も正式発表した。」
「上野理事長は、当面は海外重視の運用を見直すが、『グローバル化の流れは変わらない』と述べ、市況が回復すれば再び海外で積極投資する考えだ。」
と報道され、さすが元官僚の無責任体制というものを思い知らされるものである。
なぜなら、今後損失は拡大する傾向にありしかも、安易な海外投資に対する反省がない。
その上、「公的資金に頼るつもりはない」と逃げを打っている。
それは、もし金融機能強化法によって「資本注入」されるとするならば、例え「旧法で注入の条件としていた再編促進や経営責任の追求」が求められなくとも「道義的責任」から理事長の引責辞任は当然だろう。
しかも退職金なしで。
2008/11/27報道各社が「田母神前空幕長に退職金手続き 防衛省」と7000万円弱の退職金が支払われると非難している。
しかし、大損失した農林中金の(天下り)理事長の年俸が約4100万円だと聞かされれば、田母神前空幕長の退職金など安いものではないか。
ここで、理事長はこの大損失にも係わらず、「海外で積極投資」をうたっているからその責任など当然取るはずがない。管理職が責任を取らないから担当者もお咎めなしだろう。
なんとも無責任体制とはこのことだ。

一方、「サイゼリヤ・140億円のデリバティブ損失で連続ストップ安、見えぬ底」ともある。これは、「円相場が豪ドルに対して円安に振れれば支払金額が軽減されるスワップ取引を証券会社と結んでいた。ところが、実際には大幅な円高となり、その評価損は他通貨を含めて140億円に達しているという。」という円安が当分続くと思い込んだ誤りに基づくものだ。
同じ様なものが、「駒沢大、155億円損失」‥「「スワップ取引」と呼ばれる3つのデリバティブ(金融派生商品)契約。‥‥問題のデリバティブ取引は、主に金利などを交換する「金利スワップ」と「通貨スワップ」の2種で、昨年度、外資系金融機関2社と契約」
その他にもいろいろ報道されたが、探すのも面倒なのでこれのでとするが、どうして日本円は円安のままで推移すると考えたのか実に不思議だ。
少なくとも1年前の段階ではサププライム問題が顕在化して早晩金融バブルは弾けると想像出来たはずではないか‥‥今から見れば結果論だが。
実は、あのFXで巨額脱税の主婦は、脱税の摘発もあって7月にFXを手仕舞いし、又あの秋葉原のビルをキャッシュで一棟買いした「誤発注で大儲けした個人投資家」も株安を見越してそれなりに手を打ったに違いない。
機関投資家という一応プロが痛い損失を被る中、一部のセミプロ(?)投資家は上手に売り抜ける。
この人から考えれば、「機関投資家というプロ」が素人で「セミプロ個人投資家」が玄人ということになる。

さて、2008/11/28の読売新聞朝刊に日本銀行が発表した「10月の金融政策決定会合」の議事要旨が掲載されていた。読売新聞の見出しでは「『市場との対話』懸念残る」と批判的に書かれている。今のマスコミ経済人の論調は、「ゼロ金利政策」への回帰要望なので予想されたことではある。

産経新聞では「田村編集委員」が

イ)「日銀は日本の好機をつぶすのか」(11/22 20:53)
ロ)「円高を加速させる『ゼロ金利回避』」(11/23 09:37)

で日銀政策を批判しているが、世界経済の潮流を無視した事実誤認を繰り返している。
以下 イ)の論調から

1)日銀のかたくなな政策が国際的な金融政策の潮流変化についていけず、円高を加速させているためだ。

‥‥‥はっきり言って、今の円高が日本が「ゼロ金利政策」にせず、日本経済を魅力的にしなかったからと批判しているようだが、誰が見ても「円キャリートレード」の解消だくらいのことは素人でも分かる。
そして、ドル札を過大に発行すればドルの価値が下がるのは経済の常識というものだ。

2)急激な円高は株価の急落を誘い、大手金融機関を資本不足に追い込み、企業の収益力を奪う。                  

‥‥‥株価の急落は円高の影響ではなく、投資銀行などのファンドの解約による換金売りというのは同じく常識で、本来円安になるはずがそれよりも円買いの圧力が強いことを意味している。それだけドルが弱いということだ。
そして、企業の収益力を奪うというが、米国経済が失速して購買力もローンの組めない状態であれば、消費社会の米国へ売り込むという長年の「ビジネスモデル」が崩壊したということで、トヨタやソニーが減益になっても円高というより販売不振である。

そして、トヨタ自動車は欧米に対して、「ゼロ金利ローン」で車を販売するという暴挙に出そうな情報がある。それが出来るならは日本でやるのかといえばやらないだろう。
それだけ、日本で儲けて諸外国で安く車を売るというビジネスモデルは限界だと言うことだ。

3)「日銀が円資金を市場に出し渋るのは、ゼロ金利を避けるためだ」と市場関係者の多くがみている。「ゼロ金利」になると、短期金融市場機能での日銀の影響力は大幅にそがれ、金融調節の妙味がなくなる。日銀のエゴがゼロ金利を拒む。

‥‥‥とやっと、本音が出た。
ところが「ちょっと待てよ」なのだ。
なぜかといえば、日本が「ゼロ金利政策」を実施して、果たして景気は良くなったのかということだ。
事実は、過去ブログでエントリーしたとおり、企業は高金利時代に借りた資金の返済に追われ、「ゼロ金利政策」が終わる頃には持っていた資金を使い果たして倒産の憂き目を見るか体力を消耗した。
銀行は、金を借りる優良企業が減り、又金融庁が債権を厳しく査定して企業から貸し剥がしを促進した。
貸すリスクを取るならば、海外の投資ファンドに安い金利で貸し込んだのが「円キャリートレード」。
事実は、「ゼロ金利政策」というのは、「デフレ脱却の触れ込みながら」国内から資金流出を招き日本経済のデフレを促進したにすぎなかった。
論者は、そんなことを無視して尚も日銀批判を続けるのだが、もし今「ゼロ金利政策」に回帰したとしても、世界経済を見れば景気が上がるとはだれ一人思わない。
そして、まだ日本から米国へ資金をつぎ込めと主張して止まない。
それはこのくだり‥‥

「1987年10月19日の株価大暴落「暗黒の月曜日」以降は日米金利差を縮小させないために利上げできず、結局超金融緩和の中で株と不動産のバブルが膨張した。」
「『為替相場』と『日米金利差』は日銀にとって禁句だ。」

以前から言うように、日本の金を米国に注ぎ込むことによって、米国は返す予定もない借金の上にドル高好景気となり、日本は自身の金を貸した「おこぼれ」をもらうという自虐。
結果、日本から資金が無くなりデフレスパイラルに陥ったということである。
そして、この論者というのは日本は「デフレ不況」に陥っていなかったと思っている節がある。

「金融危機が世界的デフレ不況に転化し、日本も巻き込みつつある現在と、その恐れが皆無だった20年前とは状況が完全に異なる。」

冗談ではないぜ、日本は世界がデフレ不況に転化する前から「デフレ不況」だ。
好景気なら、とっくの昔に政策金利はサププライム問題以前の米国並みの5%にはなっている。
そして、日銀がもし再び「ゼロ金利政策」をして景気が上がらなかったとき、この「論者」はかっての帝国陸軍参謀殿のように「なぜだ!オカシイ」「経済が間違っている」と言うのだろうか。
ロ)の論調で、

「日米の逆金利差はさらに広がりそうだ。円高は一層加速しよう。」

と金利差一本やりで、米国のサププライム問題による不良債権処理とその過程によるドル札増刷を全く無視している。
そして、不思議なことに「円キャリートレード」の不合理さ、金融バブルの発生の原因の一つということを全く無視している。
無視するのは、「円キャリートレード」問題を出されると、「ゼロ金利政策」回帰という論調が根底から崩れる事につきる。
その上、論調の冒頭

「円高に歯止めがかからない。原因は、ヘッジファンドなどの円買い戻しにあるといわれているが、実は現象に過ぎない。」

と述べいるのにもかかわらず、

「ヘッジファンドも日本の金融機関から借り入れた円資金を『巻き戻す』。国内外で円売り、ドル買いを仕掛ける勢力はいなくなり、一方的に円買い・ドル売りが進む。」

と逆のことを言っている。

はっきり言って、自分の論理が実体経済と合わないのに認めようとしないで自説を力説する。
しかも、過去の経済政策を顧みようとしない。
本当に何度も言うように、帝国軍人の戦略のなさと戦術の稚拙さを思い起こさせるものだ。
あの愚劣な作戦、インパール作戦は、現地の司令官が反対したために、更迭までして参謀本部が敢行した、単なる後ろに回り込む作戦。
日本の経済政策があの「インパール作戦」とならないように望むだけというのが僅かな願いというものではある。

イ)論文
【円ドル人民元】日銀は日本の好機をつぶすのか
11/22 20:53
世界金融危機はつい最近まで「日本の好機」のはずだったが、一挙に危うくなってきた。日銀のかたくなな政策が国際的な金融政策の潮流変化についていけず、円高を加速させているためだ。

 米低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)危機による打撃が比較的軽いとみられてきた日本の金融機関も大手企業も財務体質が良好だった。だが、急激な円高は株価の急落を誘い、大手金融機関を資本不足に追い込み、企業の収益力を奪う。

 現在の円高・ドル安の実相は金融現象である。ドル金利よりも円金利が高くなる日米の金利差逆転で、円の魅力が実力以上に増したからだ。日銀は政策金利を10月末に0・2%引き下げたあと、0・3%の水準を維持しようとして市場への資金供給を増やさない。これに対し、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融危機に対応するために巨額のドル札を刷っては短期金融市場に流し込んでいる。FRBの市場誘導金利は年1%で、日銀の政策金利0・3%より高いが、為替相場に影響する市場金利は今月に入って米国で0・3%を下回るケースが増えている。米国は欧州とともにデフレ不況の深刻化を防ぐために、一段の利下げと量的緩和に踏み切る見通しで、日米の逆金利差はさらに広がりそうだ。そうなると、円高は一層加速しよう。

 「日銀が円資金を市場に出し渋るのは、ゼロ金利を避けるためだ」と市場関係者の多くがみている。「ゼロ金利」になると、短期金融市場機能での日銀の影響力は大幅にそがれ、金融調節の妙味がなくなる。日銀のエゴがゼロ金利を拒む。

 不可解なことに、日銀にとって円相場と株価は考慮外のようだ。金利据え置きを決めた21日の政策決定会合は「経済・物価の見通しとその蓋然(がいぜん)性、上下両方向のリスク要因を丹念に点検しながら、適切に金融政策運営を行っていく」とした。物価と景気動向に注意するというのは、昔からの日銀の常套(じょうとう)句である。危機対応しなければならないというのに、まるで平時モードそのものである。

 日銀が国際的な協調行動を警戒する背景には、1985年9月の「プラザ合意」の後の苦い経験がある。円高・ドル安進行阻止のために何度も米国との協調利下げに追い込まれた。1987年10月19日の株価大暴落「暗黒の月曜日」以降は日米金利差を縮小させないために利上げできず、結局超金融緩和の中で株と不動産のバブルが膨張した。日銀内の異論は封じ込められ、金融引き締めのタイミングを失した。以来、「為替相場」と「日米金利差」は日銀にとって禁句だ。

 金融危機が世界的デフレ不況に転化し、日本も巻き込みつつある現在と、その恐れが皆無だった20年前とは状況が完全に異なる。日銀が「独立性」を生かすために、国際協調に背を向け、日本経済が死に瀕するようなら、本末転倒もはなはだしい。(編集委員 田村秀男)
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ロ)論文
【国際政治経済学入門】円高を加速させる日銀「ゼロ金利回避」
配信元:SANKEI EXPRESS 11/23 09:37
円高に歯止めがかからない。原因は、ヘッジファンドなどの円買い戻しにあるといわれているが、実は現象に過ぎない。真因は急ピッチの日米金利差縮小にある。最近は米金利が日本より低くなる金利差の逆転が起きている。米連邦準備制度理事会(FRB)が金融危機に対応するため、巨額のドル資金を刷っては短期金融市場に流し込む量的緩和に伴って、短期市場金利が大幅に低下している。対照的に日銀は円資金の供給量を抑えて市場金利が政策金利(年0.3%)を下回らないように金利操作している。米国や欧州はデフレ不況突入を防ぐために、さらに利下げに踏み切る見通しで、日米の逆金利差はさらに広がりそうだ。円高は一層加速しよう。

 ■相場左右する日米金利差
 米国の高い金利と日本の低金利という日米金利差が円ドル相場にどう響くは、グラフをみれば一目瞭然(りょうぜん)である。日米金利差は日銀が「ゼロ金利政策」を打ち切った2006年7月をピークに縮小し始めた。金利差の縮小がはっきりした07年6月から円高方向に振れ出した。米国発グローバル金融危機の発端は07年8月の米低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)危機勃発(ぼっぱつ)だが、円はその2カ月前に円安の底を打っていた。

 日米金利差が円ドル相場を左右する傾向は1980年代後半から一貫している。機関投資家やヘッジファンドなど投資ファンドが比較的低い円資金を日本で調達して円を売りドルを買って、より高金利のドル資産で運用して収益を稼ごうとする。それは「キャリートレード」と呼ばれる。

 ■「ミセス・ワタナベ」
 数年前からは、海外で「ミセス・ワタナベ」と総称される日本の個人投資家が「外国為替証拠金取引(FX)」に参入するようになった。最大で手持ち資金(証拠金)の200倍ものドルを買い、円安・ドル高と日米金利差で収益を容易に稼ぐことができた。これも一種のキャリートレードである。FX取引仲介業界によれば、FX取引が盛んなときには1日で3兆円分もの円売り・ドル買い介入効果が見込めたという。

 「ミセス・ワタナベ」と海外の市場関係者から呼ばれたのは、家庭の主婦までが手を染めるまでFX取引が一般化したことが背景にある。日本人の姓に多い「渡辺」を引用したわけだ。実際には5割以上が会社員で、多くはインターネットを駆使してFX取引している。読者のなかにはそんな「FXプロ」もいらっしゃるだろう。

 ところが、ここへきての急激な金利差縮小と円高で、FX取引で痛手を受けている個人投資家も多いようだ。特に金利差が開いている間は、多少の円高になっても金利差益で損失をカバーできたが、今はその逆である。日米金利差は解消、逆転したからだ。個人を中心としたFX投資家はこうして退場を迫られている。ヘッジファンドも日本の金融機関から借り入れた円資金を「巻き戻す」。国内外で円売り、ドル買いを仕掛ける勢力はいなくなり、一方的に円買い・ドル売りが進む。

 ■忘れられた本来の使命
 現在、米国の短期市場誘導金利は年1%で、日本の政策金利0.3%とはまだ差がある。ところが実際の市場金利は今月に入って米国で0.3%を下回るケースが増えている。日銀は10月末に0.2%利下げしたあとも0.3%の水準を維持しようとして市場への資金供給を増やしていない。米FRBは欧州とともに近く一層の金融緩和に踏み切る情勢で、日銀が現行の金融政策を続ける限り、日米金利差逆転が定着しそうだ。その結果、円高・ドル安にはずみがつくのは必至だ。

 現在の円高・ドル安は日米の金融政策のずれから生じた金融現象なのである。日本の金融機関や産業界は、世界金融危機による直接の打撃は米欧に比べて少ないとみられてきたが、円高に伴う企業収益の大幅減と株価の急落で、金融機関は株式の含み益を喪失、企業の資産も損なわれている。

 日銀はゼロ金利回避により金融市場への影響力を保持しようとしているが、日本経済の安定という本来の使命を後回しにしている。その結果、健全だったはずの日本の金融・産業界が金融危機に引きずり込まれ、死屍累々(ししるいるい)という最悪の事態になりかねない。
 (特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS)

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