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2009年1月17日 (土)

円安にすれば景気が回復すると、今でも主張する懲りない経済学者 その2

円安にすれば景気が回復すると、今でも主張する懲りない経済学者 その2

今の日本経済はどうなのだろうか。こんなことは聞かなくても誰でも分かっている。
デフレ経済の経済失速だ。
今日の町内での新年会で、昨年建設が始まると事前説明会があったマンションの建設が中止になったとの話を聞いた。
そして、その隣にあった旧保険会社ビルも壊してマンションにするという計画が白紙に戻ったという。あのリーマンショック以来分譲マンションの売れ行きは「ピタリ」と止まった。何と言っても、派遣斬り、期間労働者解雇報道、麻生総理の「100年に一度」の受け売り言葉が良くなかった。
しかし、地方としては以前の歯抜けの土地、使われないビルだらけのデフレ経済に戻ったというもの。
そして、以前からのデフレは変わらない。
そんな状況なのだが、経済学者というのはそのデフレの原因という物を説明出来なければ単なる給料泥棒呼ばわりされるだけである。
さて、日経新聞の「Biz-Plus」のコラムに「ニュースを斬る もう、そこにある日本のデフレ データから見えてくるデフレスパイラルの恐怖(2009/01/16)」というのがあった。
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/nbonline.cfm?i=2009011600872cs&p=1
このコラムは、政策研究大学院大学准教授・桑原進氏が寄稿しているもので、元経済企画庁の官僚であるから、政府、日銀、経済界、御用経済学者の意見の集約といって良いだろう。
これによれば、「ブレーク・イーブン・インフレ率」という財務省の数字遊びを利用して「デフレ」だと説明している。しかし、それは「金融関係者はデフレ圧力についてどんな見方をしている」か、であって単なる指標・言い訳に過ぎない。
その意見によれば、「ブレーク・イーブン・インフレ率」が平成16年3月期から20年9月期まではマイナスになっていない。
ところが、よくよく見れば分かる通り1%から2%の枠内での話だ。
「インフレが発生すれば、通常の国債と物価連動債の利回りが一致する」といっても、2%程度のところでインフレとは呼ばないだろう。
実際のインフレは、この夏にパンが上がったのが20-30%だ。
百歩譲って、確かに9月以降急激に落ち込んでいる事は事実だ。要するに、デフレ不況が深刻になったという事は分かる。
しかし、こんな事は学者によって指標を示されるまでもない事だ。
そして、そのデフレを説明するに当たり、段々妙な展開になるのどうした事か。
■円高と需給ギャップがデフレ圧力を深刻化の項目で‥‥
それはもデフレの影響を「国際的な資源・エネルギー価格の下落がデフレに寄与する」と主張しているのだが、その説明は「2008年夏以降は、世界的に食料・エネルギー価格が下落してきていますから、今後は国内の物価下落要因になりつつあるのです。」
これで納得する国民はいないだろう。
なぜなら、ガソリンなどのエネルギーは高騰を続け、このリーマンショックによる投資資金引き上げによって正常な価格に戻りつつあるからだ。
しかし、ガソリン価格が下がったからと行っても、パンは下がらないし値上げした食料品は下がったという話を聞かない。
そして、安全な米として「産直のあきたこまち」10kg-5,800円(税抜・送料込)の価格は一定だ。
要するに、「国際的な資源・エネルギー価格の下落がデフレに寄与する」とは断定出来ない。
それではと次に出していたのが、
■金融政策の遅れが招いた2008年以降の円高‥‥
「では円レートはなぜここまで上昇したのでしょうか。」との書き出しで、「2003年から2004年にかけて日本の政策当局が行った強力な為替介入の成果」によって、「2007年末までに終わった景気拡大局面の間、日本の円はかなり低い水準にありました。」 と述べる。

要するに、米国を含めて世界中が5%程度まで金利を上げて資金を抑制したのに、日本だけが超低金利を維持して、「円キャリートレード」を創出し世界中に金をばらまいた。
そのお陰で、円はドルに替えられて円安に、そして高い金利を求めてドル、ユーロその他の金に換えられて益々円安になったにすぎない。
近年では、これを過度な円安、日本の実力を反映しない円安と呼んでいる。

桑原先生は、そこでいつの期間を示しているのか分からない次の件。
「日本では、景気が回復し、金融機関の経営が安定したのに伴い、為替介入を裏で支えた日銀による量的緩和政策は撤廃され、金融政策は全般に引き締め気味に推移しました。」と日銀の引き締めを円高の理由として説明している。
しかし、日銀の引き締めは、円安の時でもしばしば行われていたのであって、リーマンショック以降に限定出来ない。
その効果は桑原先生が主原因と主張する引き締めの後でも「円安」であるからだ。
そして、その証拠は桑原先生自体が示した次の指標でばれてしまう。
要するに、通貨供給量は変わらないと言う事だ。
又、その日銀の引き締めは「利上げ」という事実上の通貨供給行為ではないことに注目すべきだろう。

円高に転じたのは「リーマンショック」以降であるというのは誰だって知っている。
そこで今度は、「金融当局の緩和スタンスを反映しやすい貨幣供給量の指標であるM1(=現金通貨+預金通貨)の推移」という指標を出す。
日本は2007年1月を100とした場合、2008年11月までほとんど変わらない。
一方、米国は2008年5月以降から上昇し8月から急上昇。ユーロ圏は、2008年9月から急上昇する者の一貫して高い。
「経済の伸びと比較し貨幣供給量が相対的に大きく伸びればその通貨の価値は下がり、そうでない通貨の価値は上がります。」
と説明する事は、納得するもののそれでは、2007年1月以降から8月の円安は説明出来ない。
はっきり言って、都合の良いデーター解釈というものではないか。
次に「今後米国では大規模な財政出動が期待されますが、これはドル高・円安につながります。」
ここは、当然ことで米国がドル紙幣を際限もなく増刷すれば、ドルは相対的に下落するのは当然だ。なぜなら、そのドル紙幣には経済実態が無いからである。
さて、次の事が良く分からない「しかし、米国でさらなる金融緩和が行われる一方、わが国の金融政策の対応が遅れたままでは、一層の円高を招く恐れがあります。」
上記の説明では、米国がドル紙幣を際限もなく増刷されるから、円高は押さえようもない。
そして、「それは国内のデフレ圧力を一層深刻化させることにつながりかねません。」と飛躍する。

■欧米のデフレ圧力まで引き受ける愚を避けるべき‥‥
の項目になると一転して、米国経済のまだ見ぬ処方箋の賛美が始まる。
「米国ではオバマ新政権が財政面で大胆な政策転換を行うと期待されています。金融面では、バーナンキ議長による果敢な緩和策がすでに実行されてもいます。また2007年の時点で金融危機が始まっていた欧州においても、当局の対応は進んでいます。」

はっきり言って、これは経済を議論しているのではなく、米国経済の「信仰」。
「米国経済学」信仰とでも言うべき事のように思える。

そして、とって返す刀で「しかし、わが国の金融政策は遅れています。その結果、円高を通じて輸出が一層減退し、需給ギャップが大幅に拡大することが懸念されます。」
という、何が遅れているのか‥‥
ここまで来ると大方予想が付く。
最後の結びは
「日本の景気は、すでに後退局面にあります。
そこに世界的な資源価格・食料品価格の下落によるデフレ圧力、さらに金融政策当局の対応の遅れによる円高圧力まで加わっており、日本は物価の下落と需給ギャップの拡大の悪循環というデフレスパイラルの入り口に再び立っています。
円高を通じて欧米のデフレ圧力まで引き受ける愚は避けなければなりません。
今後、金融政策当局には一層の対策が望まれます。」
何か歯切れが悪いではないか。

デフレの原因は、投機資金が引き上げたための「原油価格」「食料品」の下落。そして「円高」ということになる。
しかし、庶民から見れば今まで述べてきたように、「原油価格」「食料品」の下落は、元に戻ったのであり、円高は日本の実際の実力を反映したものだと言う事だ。
そして、「米国がドル紙幣を際限もなく増刷」している以上円高は防ぎきれず、又米国、ユーロ圏の金利が、限りなくゼロ金利政策の日本の金利に近くなってくるか多少逆転する以上避けられない。

そして、この様な世界的なデフレになった現状では無理して「円安」にしても、米国で又海外で日本の物が売れる保証はない。
あのアイスランドでは車の需要は96%程度下落したという。
以前、日本円が80円程度になった事があった。
その時、日本はデフレになったか。
確かインフレだったはずだ。
あのバブルの時代、直前まで年8%の高金利。
そして、バブル時代も今で言えば高い金利だった。その高金利の時に、デフレには当然ならなかった。
経済学者は、こんな単純な事も説明していない。

そして、誰も口をつぐんで言わないが、2008年8月頃までの円安によって、日本の景気か良くなったのではなく単に日本の金が海外に投資され廻り回って日本に流れ込んできたに過ぎないという事だ。
そして、実際は円安によって日本から金が流出し、かつその後円高によって過大な金を損失した。
もし、過度な円安を誘導していなかったら、日本が適当なときに利上げして米国より高い金利をつけていたら、「円キャリートレード」は起こらず、投資資金が余ったりせず騰貴は小規模だったも知れない。
早く言えば、リーマンショックは起こらなかったかも知れないという事だ。
そして、当然年金資金による5兆円内外の欠損は出ず、逆に膨大な利益が創出し、且つ預金利子の税が何兆円も出たはず。
その結果として、年金には税金を投入する必要はないだろうし、消費税の値上げ論議は起こらなかった。
しかも、トヨタ自動車は世界に50以上の工場を持ち、事実上円高には充分耐えられたはずだ。
今、トヨタ自動車が赤字だというのは、円高のためではなく車が売れないからだ。
今のデフレというものは、超低金利、ゼロ金利政策の弊害だ。
そして、今の不況には「官製不況」という規制強化が強まった。
社会主義政策、増税で景気が回復したという歴史は有史以来存在していないという事は誰も言わないのだろうか。
日本の経済に対する「実験」は今も続く不思議さがある。
日本の科学者が絶対にやらない事、それは基本条件の違うデーターを他のデーターから導き出した公式に当てはめないことだ。
しかし、経済学者は違う。
経済は普遍とでも言うのだろうか。米国経済は普遍ではない。
米国経済と日本経済とは同じではない。
そして、デフレとは円高でも原油価格、食料品の下落ではなく、そのものを買う金がないという事だ。
日本には、「需要と供給」という基本概念すら分からない政治家、官僚がかって多くいた。ならば、「デフレ」が判らない人達がいても不思議はない。
しかし、彼らが日本の指導者であってはならない。

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