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2009年12月21日 (月)

小説「坂の上の雲」を読み直す・その2・NHKスペシャルドラマ第4回日清開戦

小説「坂の上の雲」を読み直す・その2

侵略者を強調、反日プロパガンダと化したNHKスペシャルドラマ第4回日清開戦

NHKスペシャルドラマ第4回日清開戦12月20日(日)放映
日清戦争のシーンになったらどういう事になるのか見てみたが、秋山好古が登場するまでは、まあそんなものだろうという感じがした。
秋山大隊(騎兵少佐)の戦闘シーンは、旅順に向かう「双台溝から山間堡」の地点で一個旅団以上の敵と遭遇したと言うシーン。
大方小説通りであるが大隊が酒を買うようなシーンは出で来ない。
ここで、酒を売る老人に何やらいやみを言わせているのはNHKの論理だろう。
金を払わないのなら酒など持ってくる筈もなく、文句も言うはずはないのである。
パールバックの大地を読んでも分かるように、中国人というのは征服者が来ればどこかに逃げてしまうというのは大昔からの常識。
NHKの感覚というのは、中国と日本を同じと思っている浅はかさがある。
一方、海軍の開戦となると
豊島沖海戦(小説から抜粋)
宣戦布告前の7月25日、日本海軍の第一遊撃隊、巡洋艦・吉野・秋津洲・浪速が豊島沖で、清国海軍の済遠、広乙と遭遇。3,000mのところから済遠が実弾発射。戦闘が開始される。
済遠は逃走、広乙は座礁降伏し、済遠を追いかけていた浪速が、清国陸軍将兵が満載された大型汽船を発見した。
ここからが、第3回の最後と第4回の冒頭にあたる。
詳細をナレーションででも入れたらどうか、清国と砲火を交えたのは東郷平八郎が最初ではない。
NHKとしては、日本人は好戦的と印象を持たせるつもりかとと言うことは、後半に証明される。
黄海海戦
日本側は一艦も沈まず、清国艦隊は12隻のうち4隻が撃沈。残る7隻は旅順に向かって逃走。
威海衛の戦い(海戦?)
‥‥清国海軍の巨大戦艦、定遠、鎮遠が威海衛に逃げ込んでそれを攻撃するために、水雷艇による魚雷攻撃を仕掛けた戦いである。

秋山真之が登場するのは、この威海衛である。
だから、秋山真之(少尉・航海士)は、巡洋艦筑紫1,350トンという砲艦並みの軍艦乗り組みとなり、黄海海戦などにも参加していない。
小説にあるのは、思い出話に子規に語ったことで、
「(巡洋艦筑紫)威海衛の港口にあって港内を砲撃していたとき、巨弾が飛んできた。」
「その巨弾は爆発せぬままに筑紫の左舷から中甲板をつらぬいて右舷側へとびだし。そのまま海中に落ちた。いわば串刺しの目に遭ったが、このとき、下士官1、兵2遭わせて3人が即死し、将校2、兵3が負傷した。『甲板は血だらけになった』」
この様に見ると、NHKスペシャルドラマのシーンが多少違和感がある。
なぜなら軍艦に弾が当たりすぎる。そして、敵の軍艦の砲撃で多数兵士が死んだように描かれているのは大分違う。
その後のシーンとして軍人を止めようか、とかのところがあるが小説にはない。
その巡洋艦筑紫軍艦の艦上で広瀬少尉(番組では)に
「広瀬さん」‥‥軍人にこういう言い方はしない。
「わしは軍人には向いとらん」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「いくさは恐ろしい、さっきまで隣にいたやつが、一瞬にして死んでしまう」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「儂(わし)はあのとき命令をださなかったらあいつは死んどらん」

当然こんな部分は、小説にはなく当時の秋山真之が言うはずもない。
要するに、NHKの主張解釈ということである。

しかし、以下のことは不思議なことに全く入れられていない。
一方、「双台溝から山間堡」の時の苦戦している戦闘で、秋山好古が部下の伝令に
「河野(第一中隊長)にそう伝えよ。貴官は第一中隊をひきい、乗馬をもって敵の砲兵陣地を攻撃、これを撃滅すべし」‥‥…
河野大尉は死を決意し、好古の前で刀の礼をし、
「これでお別れします」と言い、駆けて行った。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
実際、この突撃は情勢の変化で中止になり
「河野大尉にいえ。命令中止」と言って退却になる。
砲兵陣地を騎兵隊が突撃するというのは場合よっては難しく、この戦闘の場合クリミヤ(Crimea)戦争(1854-56)での「バラクラバの戦闘」に見られるように全滅するのは必到なのである。
司馬遼太郎は、「アノトキ秋山サンハ酔ッパラッテイタノダ。」と言うことで逃げているが事実ではないだろう。

司馬遼太郎は秋山真之の心境として‥‥
「人の死からうける衝撃が人一倍深刻であるという自分を知ったのもあのときからであった。」とあるのだが、少し小説から離れると本当にそうだろうかと思う。
多分、これは司馬遼太郎本人の感じたことではないかと思うのである。
そして、実際、事実として秋山真之の言葉としては書かれていない。
なぜなら、小説「坂の上の雲」の司馬史観では、旅順攻撃の乃木大将を無策、無能の将軍として罵倒している。
しかし、実際はその乃木大将は、日露戦争後男爵になり後に伯爵になった。又、参謀長の伊地知幸介少将は、同期トップで中将に昇格(ウィキペディアWikipedia))後に、男爵になった。
この事実は何なのだろうか。
戦争で軍人などが大量に戦死するのを忌避するというのは、色々な書物を見る限り第一次大戦末期からである。
それは、Evil(イープル)という塹壕戦による大量の戦死者を出してから考えられ、第二次イープル戦と言われた戦いでは、50万人という被害が出た後は今の感覚に近くなっているのである。
それで、第二次大戦で、まだ第一次大戦の感覚が抜けなかったHitlerや米国のPatton将軍など戦死者多量に出ても勝てばよいという感覚は批判されるようになった。

この日露戦争というのは1904年勃発。第一次大戦まで10年もある。
19世紀末期というのは、日本では西南戦争を経験して、多少の血を見たり大量の戦死者など今の感覚では計り知れないものがある。

いずれにせよこの問題は後日の談としてさておくとして‥‥
NHKスペシャルドラマでは、子規が従軍記者として決まった部分で変なシーンが出てくる。
これも小説にはなく当時の雰囲気が書かれている小説の中身から見て異質である。
当然嘘で、NHKの言い分という解釈である
子規が従軍記者に決まった、大阪師団とともに支那へゆくと大喜び。
そこで、母親が
「随分親しかったお国と戦っているのじゃな」
「見てごらん、掛け軸は漢詩」‥‥
妹が
「漢字も支那のものじゃからな」‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥母

「支那は夢のようなお国で誰も憎い敵じゃとは思わなんだ」
この部分は、NHKとしては現在の中国にたいして釈明しているのではないかと思わせる。
そして、それを上回る変な部分が次に出でくる。
それは、子規が戦地を廻った部分が映像化されていた部分で、この部分は小説には記載がない。(「須磨の灯」)
そのシーンは、占領軍として柳樹屯、金州城、旅順などのシーンで日本軍が略奪をしている風なところがあることである。
ここに、秋山好古に酒を売った老人が出で来る。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
子規などの従軍記者が歩いてゆくと
「日本人だ」‥‥と言って中国人が逃げ回る。‥…あり得ない風景。
「やめてくれ、持って行かないでくれ」
「それを持って行かれたら」
「もう村には何もない、すべてあんたらが持っていった」
「わしらは一体何を食って、飢えをしのげと言うんじゃ」

取りすがろうとするこの老人を警護の軍人が銃床で蹴る。
ここで子規が飛び出て、「○○、酷(むご)いことやめんかね」

「この子の親はお前らに殺された」
「いつかきっとこの子が親の敵を討つ」
子規は通訳を曹長に頼むが、まともに通訳をしない曹長に子規が食ってかかるという次第。
シーンは移っても子規は強圧的な曹長に小言を言われ続ける。

このシーンはどう見ても酷(ひど)い。

多分、NHKの主張として日清戦争からは「侵略戦争だった」という刷り込みをしたいように思えてならない。
そしてどう考えても反日プロパガンダそのままなのである。
小説にないところでNHKスペシャルドラマでは、またまた反日反戦的なNHKの思想を入れ、反日を煽るのは感心しない。
1900年北清事変(義和団事件)という義和団を中心とした事件があったが、日本軍の規律の厳しさは日英同盟につながったという歴史は有名なのである。
そして、不思議なことに医官の森林太郎(森鴎外)に会って歓談する。
小説「坂の上の雲」では絶対に出で来なかった森鴎外である

柳樹屯のシーンでおかしいのは、住民がキチンといるのに「略奪」などがありそうに表現しているシーンであることである。
日本軍が略奪をしているようなシーンなのだが、NHKは日本軍が金を払って現地調達しているシーンだと強弁するだろう。
しかし、それにしては発言がおかしい。
そして、そういう発言をするというなら、逃げた住民などは戻ってこないと言うのが常識であって、住民がいると言うのは治安が保たれている証拠でつじつまが合わない。

そして、最後に小説には全くない事、海軍省において秋山真之にもう一度東郷平八郎に会わせてしまうことである。
その上、酒を飲んだり、女々しい悩みを打ち明けたりビリャードをしてしまうなどあまりに酷すぎる。
最後に秋山真之が東郷平八郎に質問する。
「よき指揮官とはなんでしょうか?」
「ご自分が出した命令を後悔したことはありませんか?」


元々そんな邂逅はなかったから、そんな質問はないはず。
何やらNHK風のいやな女々しい秋山真之というのは小説「坂の上の雲」の真之とは別人としか思えない。
何と言っても、本来5尺の気が強い小男の筈なのである。

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