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2010年1月 5日 (火)

小説「坂の上の雲」を読み直す・その8 詳細4反日プロパガンダ

小説「坂の上の雲」を読み直す・その8 詳細4

反日プロパガンダと化したNHKスペシャルドラマ

12月27日(日)放映第5回、留学生

NHK版の「坂の上の雲」、さらっと見流しすと何も感じない様だが、後に何か残るいやらしい毒の入ったプロパガンダ映像である。
第5回を見て、以前述べた以外にも上述のように見流すと何やら引っかかるところがある。後半最初に印象に残ったのは、アルフレッド・セイヤー・マハンと秋山真之との面会シーン。
そこでも、NHKは勝ち戦の黄海海戦を負け戦に、秋山真之を間抜けな人間として描いている。
小説「坂の上の雲」では、セントラルパークそばにある閑静な住宅街にあるマハン家をたずねた。日にちは、9月の晴れた午後とある。
そこでは、「夫人とともに待っていた。」とあって、応接室(米国では居間)で言わば雑談に近い話しをして、海軍省の三階の書庫の閲覧を出来るように手配してくれただけである。

「ツ ルリと禿げた頭髪、 無髭かと思われる程の薄い口髭、軽々しい其の挙措、 幾等高くふんでもブロードウエー街辺の安店のクラーク以上に出ぬ風貌、これが世界不朽の文豪マハン大佐かと度肝を抜かれたものである。 また其口をついて出る議論も、定めし海上権力史ぶりの堂々たるものと思いの外、 極めて地味な常識一点張りのものであった」
(篠原宏『海軍の創設ーイギリス軍事顧問団の影・http://www3.ocn.ne.jp/~y.hirama/yh_ronbun_senryaku_mahan_nihoneikyou.htm)

‥‥と資料にあるとおり、妙な議論はしない人物のようだ。
しかもその夫人と伴に待っていたのだから単なる表敬訪問というくらいだろう。
そして、実際

「秋山が渡米する時にはブルメー(Wihelm Blume)の本1冊しか持って行かなかったし(桜井清澄『秋山真之』)、また、 秋山が友人に良書として推薦した」ものの中には、「マハンの著作はない。」という。(前掲)
「『海 上権力史論』がアメリカで名声を博すると、 金子堅太郎はいちはやく海上ノ権力ニ関スル要素」を抄訳し、時の海軍大臣西郷従道に贈り、 それは1893(明治26)年7月号の『水交社記事』に「近来傑出ノ一大海軍書ニシテ、独リ米国ノ海軍社会ノミナラス、 欧州各国ノ軍人社会政事家外交官の間ニ広ク敬迎セラルル珍書ナリ。我社員ニ必読ノ書」であると紹介され、 次いで10月号から12月号まで3回にわたって第1編全文が連載された。」

さて、そのマハンと秋山真之との面会シーンはNHK版ではどの様に描かれたのかというと、何やら暗い書斎である。
案内をするのも、お茶を出すのも執事らしい男性。
そこでの会話を採録してみよう。
冒頭から馬鹿馬鹿しい非常識な展開で始まる。

マハン「私の本を差し上げましょう」
真之 「ありがとうございます。」
 「丁度この本を読んでおりました。」‥‥そんなはずはない明治26年に日本版
 「決して艦隊を分離するな 先生の格言ですね」
マハン「その通りです」
      「日清戦争の黄海海戦に参加しましたか」(鴨緑江海戦だが、ほぼ原文通り)
真之 「近くにおりました」
マハン「ネルソンの戦法を参考にすれば伊東司令官は艦隊を分離しなかったでしょう」
      「過去の戦史から学ぶことは沢山あります。いくさの原理は変わりません。」
      ‥‥‥(原文は「なにしろ、ネルソンに対してすらあのように厳格な採点をなさったのですから」)
真之 「はい」
マハン「様々な実例を研究して自分なりの原理原則を打ち立てる」
      「そして、それを実行する。学ぶだけではつまらないからね」(にた文章があり)
真之 「まさに私が目指すところです。」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ここのまでのところでは、大分事実と違う気がする。何故なら、秋山真之が渡米した時点でマハンの新刊書に至るまで読んでいると言う事である。
司馬の「坂の上の雲」では、「ほとんど全巻を暗誦するほどに熟読した。」とある。
「米西戦争」という目次には、この真之を「読書きちがいの真之」、「例の速読で読んだ。」なのである。この真之というのは非常に読書家であったとある。もちろん原書である。
ところが、次の採録部分から急に生臭くなる。
当然も小説にはないし、マハン、真之の記録にも存在しないNHK版の創作。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

マハン「君はついている、直ぐに実戦が見られるかも知れない。」
     「キューバをめぐって、スペインと対立しているのを知っていますね。」
~~~地図を示す。
      「我々に必要なのはきっかけなんだ。」
      「それで宣戦布告できる。」
真之 「戦争の大義ということですか?」
マハン「そんな大げさなものではなく、」
   「アメリカ国民を怒らせる単なる切っ掛けがあればいい。」
真之 「しかし、スペイン艦隊にアメリカ艦隊は勝てるのでしょうか?」
マハン「もちろんだとも」
真之 「その根拠は?」
マハン「我々には、日本と清国の黄海海戦の詳細なデータがある。」
      「あれは世界初の最新鋭の軍艦による戦いであった。」
      「貴重なデータを手にする願ってもない機会であり、」
      「アメリカ観戦武官によって詳細なレポートが作られた。」
      「それによって、今後の軍事作戦は我が国が優位に立つであろう。」
      「しかも我々は、一滴の血も流さず、これを成し遂げたのだ。」
~~~北米のスペイン領の地図。ナレーション。
~~真之が来たのは、正に米西戦争直前のアメリカであった。

ナレーションは大部飛躍している。
この「坂の上の雲」によれば、秋山真之が訪問したのが9月。
翌年1898年3月9日米国、臨時国防費の支出決定、スペインの宣戦布告は4月23日。
それを受けて、米国の宣戦布告は4月25日。
5月末、観戦武官のもう一人は、柴五郎砲兵少佐。
そして、真之が本の虫になって、猛烈に読書したと言う事は省かれている。

「坂の上の雲」には、「日露戦争の海軍戦術はこのワシントンの日本大使館の3階から生まれたと言っていいだろう」とある。

「しかも我々は、一滴の血も流さず、これを成し遂げたのだ。」などは無意味の筈である。

実は、このNHKが創作として入れた一文というのは二つの意味がある。
それは、あとでも述べるようにNHKは、当時の米国の好戦性を強調すること。
即ち、隠れ反米である。
その上、NHK版では完全な勝ち戦の黄海海戦は全くスルーしている上に、あえて負け戦の様な表現をつかっている。
NHKによれば、日本が戦った戦争は勝ち戦でも全て負け戦のような表現するという悪辣さは変わっていない。

そうして、秋山真之というのが、マハンに逢うのにまともに本も読んでいないボンクラということである。しかも、教えて貰わなければ分からない学校秀才型人間を強調している。
要するに、猿まねしかできない創造性のない人間と言う事である。
だから「しかし、スペイン艦隊にアメリカ艦隊は勝てるのでしょうか?」と言わせてしまう。
事実は、米西戦争直前に全て調べたと言う事である。
「坂の上の雲」では

「読書きちがいの真之は、アメリカとスペインとの雲行きがあやしくなると、スペイン関係の書物を読みあさっては、その歴史や民族性を知ろうとした。」

そして、米西戦争の章で、

「ポケットに手をつっこんでは干し豆を食った。」
「干し豆が好き、というより真之にとっては主食に近い。‥‥‥」
「キューバでは観戦中も船上でこれを食った。」
「いつもポケットが干し豆でふくらんでいる。」とある。

しかし、この状況をNHK版では、見習士官時代から軍艦上で干し豆を食べているシーンがあるこれはやはりおかしい。
海外で、食事が口に合わないなど諸般の市場があれば分からぬ事ではない。
いまでも行儀が悪いといわれる行為をあえてキャラクターとして描くというのは、やはり妙な意図があると感じるものである。

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