古びた箱の在庫品・高式熊印泥・珍品を買う
この3月になってなにやら買い漁る日が続く。それはデフレ脱却ということで今後物価が上がると言うより、円安でネット価格が上がっているからである。
実を言えば、今はネット価格に実店舗は価格を合わせている様である。それで今は「ネット」で安いものを探すよりは、実店舗で探す方が安いという逆転現象が起きている。
実店舗では期間限定の特売品でない限り、一端値段を下げたものをそう簡単にあげられないという実情がある。
そんな言い訳をして、今度は「印泥」を買ってしまった。「印泥」とはいわゆる印鑑を押す「朱肉」である。
この「朱肉」というものは、最近油性顔料インクになってしまっているから表具をすると流れてしまって使えない。
・・・というわけというより、そもそも印泥と朱肉は大違いである。
この書に雅印を鈐印(押す)というのは、篆刻家ではないからそれほど頻繁に行うわけではない。従って、この印泥というものを書家、書道家というのはあまり持っていないことが多い。
このあまり持っていないというのは、小生などの前衛部門(墨象ともいう)では、作品が仕上がって師匠が「OK」を出したとき、最後に師匠が鈐印するのが普通だからである。
この師匠が最後に鈴印するというのは、これでこの作品を展覧会に出す許可を与えるという意味もあって、自分で鈴印してくると「ダメ」出しされることも少なくない。
小生(柊雲)の師匠・横堀艸風は大沢雅休の高弟だったのだが、この鈴印に関しては随分といい加減であった。
だから鈐印した印が曲がることもあるし、鮮明にならないこともしばしばであった。
印章が半欠けということもあり、これは特別に「印が目立ちすぎる」ということで、そうしたこともあった。要するに、前衛書や近代詩文書であると漢字用に刻された雅印ではそれだけが目立ちすぎて使い物にならないということもある。
(古川悟先生の雅印は、目立ちすぎて使えなかったと広瀬舟運先生*武蔵野大学教授*の弁もある。)
この横堀艸風先生が使っていたのが美麗印泥(古いタイプの)という暗赤紫の印泥。昔はほとんどの美麗印泥を使うことが多く安い割に良く転写出来る。
「この美麗印泥は30年くらい前のものを持っているのだが、今の美麗は「どす黒く」なってとても使えたものではない。」
こういう風に割合と鮮やかの部分があった美麗印泥はなくなり、最近の流行は箭鏃(せんぞく)系の明るい色を使うようになっている。
印泥というのは、鮮やかになればなるほど価格が高価になって箭鏃という種類であると上級品ということになる。
篆刻家は、大量に印泥を使うので中国から直接買い付けてくるようなルートがあって、小生のように書道用品屋で少量買うと言うことも少ない様である。
この印泥は、吉永隆山先生(毎日書道展篆刻部審査会員)によると近年高騰しているという。
この高騰しているのは印泥だけでなく「紙」もそうなのだそうで、30年以上も前の紙を沢山持っている小生などは大金持ちになれそうだがなかなか問屋が卸さない。
そして、吉永先生の言によれば最近良い印泥は、中国での需要が多くて日本に輸入されていないという。
どおりで、最近は毎日書道展や書道芸術院の時の書道用品屋の出展で「西泠印社」の印泥は見るが、「高式熊」の印泥は見たことがない。
この高式熊印泥には、「珍品」、「精品」、「上品」の3種類があり、「珍品」があまり高くて買えなかったので「精品」を使っていた。
幾年も前から「高式熊印泥」を使う人が多く、「つきが良い」と評判だった。この小生もほとんどこの「精品」を使って、鈴印しているため実は多少減りが早い。
それでバーゲンをしていた書道用品屋のケースの隅で、色あせた箱の「高式熊印泥」「珍品」の1両(30g)装を買ってきた。
「精品」もそれなりに高かったと思って、箱の裏を見たら3,600円(税別)。
この珍品は、9,000円の4割引で5,400円(税別)だから結構な値段である。
但し、今度入ってくるときは「個人輸入ならともかく」倍以上しているかもしれないので仕方がない散財というものであった。
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