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2014年1月29日 (水)

<アーカイブ>syuun の不思議な少年時代 その27 Episode 1 その7

syuun の不思議な少年時代 その27 Episode 1
その7
【幼稚園の中のもう一つの幼稚園・年中時代2】

窓口で料金を払い、その横の狭い入り口から園内に入ると、ふじ棚があって先のりんご園は閑散としていた。
昨日の秋晴れとはうって変わっての曇りの一日。
だから見回しても、そのりんご園には、まだ園児父母は2~3組しか到着していなかった。
後ろを振り返ると一緒のバスに乗ってきたような園児もいた。
しかし、ほとんど知らない人達ばかりだった。
少し経つとS幼稚園の先生が、人数確認のために顔を見せ、怪訝(けげん)な顔をしていたが、K園長は都合で来ていなかったようだ。
そんなことを無視して、その先のりんご園の園内を廻っているうちに雨が降ってきた。
だから再び、入り口付近の軒の下に待避する羽目になった。
こんな雨宿りというものはどんなときも嫌である。
そして、S幼稚園の人達とはあまり会わないようにしていたのに、入り口付近に集まっていたのではどうしても目が合う感じがある。
しかし、母はこういう雰囲気には慣れているようで、「もう少し待ちましょう」という。
そうこうしているうちに、幾人かの園児が新しく入ってきたのと同じく、幾人かのS幼稚園の先生の姿も見える頃には昼近くになってしまった。
無駄な時間を過ごしても仕方がなかったから、お昼にしましょうという声が掛かったのにつれて、ふじ棚の下でお弁当を広げる園児家族が出てきた。
Syuunもふじ棚の下で何か昼食にしているうちに雨も上がってきていた。
知らない人達ばかりの中、こんな時というのは何となく子供ながらも場が悪い気がしてならない。
~~とはいうものの、幼稚園のグループとして来たわけではないし、勝手にりんご園に自己負担で来たのだから関係ないと言えば関係ないのである。
昼食後になって、雨が少し上がり他の園児と離れてリンゴ狩りを再開したというものの、リンゴ狩りには少し早かった。
それでリンゴが大きくなっているところを探すか、咲いている草花を探す様な感じになった。
午後のどのくらい時間が経ったのだろうか、ある可愛い女の子の園児とその父母と、なぜか一緒にいろいろと園を廻るようになった。
母、「午前中にはいなかったですね?」
女の子の父親、「少し仕事があって午後から来たものですから‥‥」
その女の子の母親は、何か同意を与えるような顔をしていたが、「雨が降っていましたので、あがったから来てみました。」と言う。
Syuunは、ほとんど顔を見ていなかったから記憶では霞んだままだ。
こういう外の世界に出た時、幼児というのはいかにして自分を守るかという動物本能しか持ち合わせていないのだろう。
子供はいつも母親の顔、正確には「目」しか見ていないのである。
だから、その女の子の顔もその父母の顔も輪郭しか分からないし、認識していない。
そして、その女の子の顔も覚えていないものの、母親に甘えるふうを見せて中々母親が指さす草花を見ることをしない。
りんご園の中、もう既にどちらの親もが楯になって、危害を与えてくる筈もない。
こうなると、子供も安心して遊べるとは言うものの大して興味がないというのがこの頃だったのだろうか。
その間には、雨が強くなってふじ棚の下に待避したり、又園内に出かけていったりの繰り返しをしているうちに夕方になってきた。
‥‥と見るとS幼稚園の先生などは帰ってしまって居(お)らず、半分くらいに減った園児は徐々にみんな帰り支度である。
その園児の中の見知っていた園児に聞けば、「S幼稚園の先生」は午前中で帰ってしまったとか。
雨は、止んでいた。
しかし、今にもまた雨が降りそうなどんよりした雰囲気が強くあった。
それだから今のうちに早く帰ろう、とそそくさと園を後にした。
国道は真ん中だけ舗装してあったが、反対側は桑畑。
街の郊外と言っても実に殺風景なところだった。
今考えてみれば、そんなところはその後50年で拡大市街地の中心になっている。
そして、今は渋川まで車を走らせても昔の風景を残しているところなど皆無である。

バス停は今朝来た国道の南に下がった桑畑の前。
国道とは言え、狭い道だから向かってくる「今で言う」ボンネットバスは多少進路を変えて向かってくる。
それで車の途切れるのを待って道を渡りバス停に行こうと‥‥南の方向を見ると、何やら茶の幌をかぶったジープが国道にはみ出して止まっていた。
朝にはそんな車はなかったはずだ。
後からりんご園を出た先ほどの女の子の(若い)父親(H氏としておく)が
「どちらへ帰えられるのですか」という。
母は、「○○町です」
父親(H氏)「○○町はどこですか?」
母「○○番地、○○の隣の‥‥」と言うと。
父親(H氏)は、「うちは○○番地だから、帰り道なので良かったら送って行きますよ」という。
丁度、雨が降り始めて来た‥それで‥‥
母は、一瞬躊躇したものの「それではお願いします‥」と‥‥
父親(H氏)は、運転席に座り込んでから、助手席の扉を開けて女の子とその母親が後ろの席に乗り、その後から傘をたたんで助手席に母と乗った。
既に、雨は本降りになり始めていて危ないところだった。
ここでも狭くて少し居心地が悪い感じがしたが、綿布が貼ってある扉を閉めてジープは走り始めた。
ジープは走り出したものの、綿布の縫い目から雨が少し落ちてくる。
妙な車だと思ったものだ。
結局このリンゴ狩りは雨の一日になった。そして、家に着く頃には本降りの雨になった。
この雨音の激しさを聞いて、子供ながら車で良かったと思ったものだ。
しかし、幌だから多少雨漏りがするのは当たり前だが、子供には奇異に思えたものである。

車に乗り込んで直ぐ後ろの座席を見ると‥‥
何やら「異物」でも見るような目をした小さな女の子と、にこにこした顔をした、驚くほどの若くそして、輝くような美女の母親(H)の顔があった。
母は、何やら相当若いと思ったのかも知れない様子で、
「お幾つなんですか?」と聞く。
その若い母親は、子供の年齢を聞かれたのかと思って「5歳」とか言う。
それに対して、母は苦笑して言う。
「私は、○○年生まれなんですけど‥‥‥」
その若い美女の母親(H)は、ようやく理解したようで‥
「私は、○○年生まれなんですよ。良く凄く若く見られまして‥ね‥」
「○○さんは、私より少し上が同じくらいかと思っていました‥‥」
母は、「そうすると、25~26歳くらいと言う訳ね‥‥、充分お若いですよ~~。」
母親(H)「ええ、子供がいるなんて見られませんし‥‥二十歳頃の子供ですからね‥‥」

綿布の屋根から少し雨が滴り落ちるくらい雨音が激しくなった頃、真っ暗になった街路の一画で止まった。
家に帰ってきたのである。
母、「今日は、どうもありがとうございました。」
母(H)、「また、幼稚園では宜しくお願いします。今まであまり通園していないのですけれどね!」
家の門の前で、後ろを振り向くと車は、直ぐ先の交差点を左に曲がって消えていった。
Syuun「どこへ行ったの?」
母「そこを曲がった直ぐそこ!」
Syuun「ふ~ん」といっても良く分からないのが実情だった。

しかし、この小さな女の子の幼稚園児は、やはりS幼稚園では見かけたことがなかった。
だから多分あまり通園していなかったのは間違いなかったかもしれない。

それにしても、古い記憶というものは「リンゴ狩り」とノートの真っ白な表紙に書くと、いつの間にか真っ黒に白いページが埋まってゆく。
そんなことは一切忘れていたのに、今では本当に昨日のことのように思い出すというのは不思議なものなのである。
人の記憶というものは、一瞬忘れたとは言うものの決して忘れていないと言うことを改めて思うものだった。

このH氏の家族とは、年長になった翌年春から夏にかけて行き来するようになり結構往来もした。
そして、どういう運命の悪戯か、もう一人の因縁のあるYと共に、このH家族の一人娘のH・Eとは中学2~3年で同じクラスになり、そして同じクラス委員にもなり、受験勉強でも競うことになる。
但し、縁はそこまで‥‥

幼い頃に、その女の子の本質というものを掴んでしまうと、どんなに美女に成長しても不思議と恋愛感情など湧かないものである。
そして、そのH・Eは当然成人してその母親と変わらないほどの美女に成長したが、今は10年に一度同窓会で会うか会わないかの関係にしか過ぎない。

それにして、H・Eの若い頃の母親は、フランス人形のように綺麗で驚くほどの美女だった。但し、それに気がついたのは、6歳になった春の頃である。
だから、そのとき覚えていたのは、一瞬の顔とおぼろげな輪郭だけである。

小学校の卒業式の時のモノクロ写真がある。
それには、その時のPTA役員の写真も入っていた。
その写真に写っている母親たちは、ほとんど和服であるのに、学年副代表のSyuunの母と、このH夫人ともう一人だけがスーツだった。

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