ハリー・ポッターと死の秘宝

2016年12月28日 (水)

2016年末、ますます世知辛い世の中になった

Omen5


今年はインフルエンザの予防接種をしそこなってしまった。
それなので予報のために「板蘭飴」などを少し遠い伊勢崎の方の店に買いに出かけた。
店が近くなって雰囲気が薄暗くなっていたから、まさか潰れたかなと思ったが電気が付いていたので店に入って見た。
店頭にいるのが、おばさんではなく若いお姉さんになっているのに違和感があった。
それはともかく、購入時にスタンプカードを出したら「○○堂」は止めて、「うちになりました。」
要するに「居抜きで」代わったわけだ。
「新しいスタンプカートは、こちらになりますから」と新しいものをもらって帰ってきた。
購入するもの、サービスなど全く変わりがなかったが、もうすぐ一杯になりそうなスタンプカードが恨めしいものであった。
そういえば、前回来店したときに「おばさんは」全くやる気がなかった。
時代の移り変わりというものは、こんなところにも出るのか。
考えてみたら、自分も良い歳になっている。

だから年賀状の住所録を調べていたら、年賀状の返事が来ないので既に住所が分からなくなっている友人知人が幾人もいる。
こういうのは住所確認も生存確認もできないし、しかも大学の住所不明欄に載ってしまっているからその生存確認すら怪しい。
事実10年前に突然死してしまった大学院時代の友人は、「寒中見舞い」で奥さんから丁寧なその旨の知らせが来ていた。
子供もいなかったと言うことで、どうしたものなのかと思う。
そして、その友人は今でも「大学の住所不明欄」に載ったままである。
年賀状は、時を経るうちに毎年簡略化してしまった。
三十年前は、一枚一枚「さし絵」を書いていた。
それが下書きが今はないプリントゴッコになり、パソコンに代わり、最後は絵は描かなくなった。
それでも宛名は手書きだったが、今は両面ともパソコンで印刷。
出さなくなるよりまだマシと言うところまで来てしまった。
その一方、子供は年賀状を書かない。
なぜなら小、中、高校とクラス名簿がない。
だから卒業して一回も同窓会というものを開いたことがないし、その通知さえもない。

大学入試の合格者は、昔、新聞に載っていた。
そう言う情報から誰がどんな大学に合格したか直ぐに分かったものだった。
それが今は「口コミ」でしか分からないし、大学側でも一般に公表しないところもある。
兄など合格電報が来る前に名前が新聞に掲載されていて、本人より家族の方が早く知っていたという笑えない話があった。
昔話はともかく・・・・

LINEで連絡が取れるからとはいうものの味気なくなった。

そういえば「運動会カメラ」という言葉もだんだん死後になっているという。
それは、埼玉や東京などの一部の小学校では、運動会でのカメラの持ち込み禁止のところもあるからである。
群馬では聞いたことがないが、随分と世知辛くなってきた世の中である。

それはそうと何年か前の今頃ハリー・ポッターシリーズ最終巻、日本名「ハリー・ポッターと死の秘宝」(Harry Potter and the Deathly Hallows)の英国語版原書を読んでいた。
ここで英国語版原書にしたのは、昔の英語辞典が使えるのとより正確な内容を知りたかったからである。
静山社の日本語訳は、米国語板だったと思うのでこれだと今の電子辞書が使えた。
英国語版の語彙だと電子辞書に載っていないのである。
そう言うことから題名も「ハリー・ポッターと死神の秘宝」が正しい。
内容もそのようになっている。
英国語版原書と米国語板とは、詳細な部分で全く違うものなのかもしれない。
それで、静山社の日本語訳が出て余りに酷い訳で驚いてしまった。
それで最新のハリー・ポッターシリーズが出ているらしいのだが、全く読む気がしない。
映画の方は、それほど細かいニュアンスは感じさせないから単純に楽しめるというものだった。
ハリー・ポッターシリーズを崩してしまったのは、静山社の日本語訳だったと今でも思う。


詳しくはこちらを参照 icon

2016_12_29



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2010年11月21日 (日)

その2映画ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1を見ての感想

その2映画ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1を見ての感想

映画ハリー・ポッターと死の秘宝パート1。これは小説のダイジェスト版の様な感じだと書いたのだが、小説から逸脱してしまっている部分も多い。
従って、映画を見る前にもう一度小説をお復習(おさら)いしておかないと「何だったけ」と展開が分からなくなるかも知れない。
たとえば第16章のGodric's Hollow(ゴドリックの谷)では、ハリーとハーマイオニーはマグルの夫婦に変身し、雪についた足跡さえ消して用心する。小説でも少しおどろおどろしい夜のシーン。ところがここで映画では変身させない。
しかし、変身させないと物語の辻褄が逢わない部分が出てくる。
ここで変身させなかったのは、どうしても変身させなければならなかった魔法省への潜入シーンのためだろう。
そこでは余りに早く簡単に進行しすぎた上に、変身してハリーとハーマイオニーとロンではなかったために物語が余計分かりにくくなったという結果が生じた。
丁寧に描写すれば問題はなかった様だが、こうも早く詳細を抜かれるとやはり分かりにくい。
後半の部分でも説明不足が顕著だから、前半の静の部分の文脈が大幅カットは余計に良く分からない展開になった。
テント生活でロンがラジオ放送を聞くシーンがある。
小説を読んでいればデスイーターに乗っ取られた魔法省に対するレジスタンスが結成されたことが分かる。
映画では、単純にこの説明がないからさっぱり分からない。
第21章 The Tail of the Three Brothersの部分では、映画では物語をアニメで示してこれは結構分かりやすい。
原書だとこの部分である。
以前エントリーで述べた様に‥‥
(英国版原書p331)
So the oldest brother who was a combative man,asked for a wand more powerful than any in existence: a wand that must always win duels for its owner,a wand worthy of a wizard who had conquered Death!So Death crossed to an elder tree on the banks of the river fashioned a wand from a branch that hung there,and gave it to the oldest brother.  ‥‥‥‥
分かりやすくするために、なるべく直訳で訳してみると‥‥‥
「それで、闘争的であった一番上の兄は、存在するどんな魔法の杖よりもいっそうパワフルな魔法の杖を求めた。
常に、その所有者のために決闘で勝たなくてはならない魔法の杖。
「死神」を征服した魔法使いにふさわしい魔法の杖!
それで、「死神」は川の土手のニワトコの木に行って、そこに下がっていた枝から魔法の杖を作って、最年長の兄に与えた。」

静山社の訳では相変わらず「Death」を「死」と訳していたが、やはり映画通り「死神」が正しい。

それにしてもジニー(ロンの妹)の部屋で、ジニーとハリーのラブシーンは映画では入れて欲しかった。
言葉だけでシーンが小説にないハーマイオニーとその両親との別れは映像で映されていた一方、ハリーの別れというのがない。
こういう伏線がないと絶望と不安の元、放浪するその後の展開が伝わってこない。

パート2では実際どこから始まるのか、簡単に第25章 Shell Cottage(シェル コッテージ)で説明して一挙に第26章Gringottsに進むしかないだろう。
何やら先が見えてきたような感じだが、又パート2が2時間10程度だったら映画は見るだろうが、大して期待出来そうもないと言うものである。

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2010年11月20日 (土)

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1を見ての感想1

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1を見ての感想1

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1、今日が初日だったのと偶然今日が会員カード感謝デーと重なったので早速見てみた。
2時間26分という話なのだが、時計を見ながら大凡の計算では実2時間10分程度であった。
最後のエンドロールが長くて、そのエンドロールが終わってから何か別の映像が出て来たと言う初期のハリー・ポッターものとは違い、前回と同じ最近の監督はそんな粋なことはしていない。
だからエンドロールが始まったらそのまま出て来ても何の影響もない。
しかし、実際の劇場映像と予め言われていた映像が10分以上違うと言うのは、試写会の段階からカットされた部分があるのかも知れない。
事実昭和45年公開のカンヌグランプリ受賞の「MASH」は、試写会映像から10~15分カットされた。(淀川長治氏の長いという指摘?‥なぜか嫌悪していた。)
このハリー・ポッターと死の秘宝Halley potter and the deathly hallows は、元々原書(英国版)で読んでいるので、日本語版の翻訳のいい加減さには、ほとほとあきれる。
その日本語版の誤訳が映像で証明されてしまうと言うのも何とも不思議なものである。
今回のパートIの物語は、初めから第25章 Shell Cottage(シェル コッテージ)まで。
日本語版では「貝殻の家」と訳されているが、映像では海辺に建つ薄汚れた様な建物が見えるだけ。
「シネマビュー」では「今回も細部まで作り込まれた映像と軽快なテンポ、あっと驚く魔法の描写で楽しめる。」と好意的に書かれている。
ところが、小説を読んでないとさっぱり分からないというのが真実だろう。
だから、小説で読んだ部分を映像で確認するという具合になる。
そう言う具合に、詳細の説明を映像でしないばかりでなく、逆に小説でわざわざ書かれている説明部分を省き、しかも微妙な部分がはっきりと描かれていない。今後の展開としては重要な部分であるはずなのに妙な事である。
そして、7人のハリー・ポッターで本来壮絶な「死喰い人」との戦いも、簡単に終わってしまうので拍子抜けというかダイジェスト版の様な感じがある。
当然、7人のハリー・ポッターでdeatheaterと戦いの部分、これは大幅に違っている。
何と言っても本物のハリー・ポッターであると見分けられる部分が全然違っている。
そう言う原作と違う部分というのは、第一章「The Dark Lord Ascending」日本語版「闇の帝王動く」のルシウスの大豪邸(handsome manor house)から始まるはずが、バーノンおじさんの引っ越しシーンのダイジェスト(第3章ダーズリーの出発)から。
ここで幾分感動的なシーンがあるはずなのに、全てなし。
そんな風に余りに違いすぎて非常に分かりにくい。
違う部分、そのルシウスの大豪邸(城に近い)に到着の時、強力・有力な「死喰い人」イェックスレイとセルブス・スネープが出会うこれがない。
この説明がないと、魔法省に潜入したときのイェックスレイの怖さが分からない。
ついでに言うと、逆さ吊りされているチャリティ・バーベッジ教授を殺すのはスネープであって、映画の様に闇の帝王ではない。
その他、前半ほとんど抜けているシーンばかりなのだが、「第7章The Will of Albus Dumbledore」(アルバス・ダンブルドアの遺言)は、詰問が抜けているから妙な部分になった。
そして、前半の重要ポイントの「ハリーとジニーのラブシーン」が別な形に展開されてほとんどないというのは解せない。
そればかりかハリーの誕生日パーティがないから「Trace」が切れたのかどうかが台詞でしか確認出来ないというのは感心しない。

少なくとも確実に2時間30分くらいにしてもう少し説明画像を入れないと単なる小説のダイジェストと言うことになって、少しも面白くない。
前作、前々作も小説を読んでいないと分かり難いつまみ食いだったが、今度も同じようになった。

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2008年8月27日 (水)

ハリー・ポッターと死の秘宝 日本語版への疑問  その2

ハリー・ポッターと死の秘宝 日本語版への疑問
  その2

「ハリー・ポッターと死の秘宝」の静山社の日本語訳。
原書を読むと「なぜ」という事ばかりなのだが、特に目に付くのが原作者ローリングが二つの意味で使っている言葉である。
たとえば、第25章 Shell Cottage(シェル コッテージ)。
この訳は「貝殻の家」。
しかし、Shellはシェルター(英:shelter)という造語があるように単なる貝殻ではない。しかも、Cottageは「別荘。コテージ。」と訳されるように洒落た別荘の様なもの。
確かに貝殻のように白く輝く家に相違ないが、だからと言って「貝殻の家」と訳されると何やら貧相ではないか。
そして、不思議なのは原書で「大文字」なっている固有名詞などが固有名詞扱いしていないこと。
「その1」で示したように「Millamant`s Magic Marquees」を固有名詞として扱わなかったと同じである。
その大文字を無視した部分を示してみる。

第21章 The Tail of the Three Brothersから
(英国版原書p331)
So the oldest brother who was a combative man,asked for a wand more powerful than any in existence: a wand that must always win duels for its owner,a wand worthy of a wizard who had conquered Death!So Death crossed to an elder tree on the banks of the river fashioned a wand from a branch that hung there,and gave it to the oldest brother.

分かりやすくするために、なるべく直訳で訳してみると‥‥‥

「それで、闘争的であった一番上の兄は、存在するどんな魔法の杖よりもいっそうパワフルな魔法の杖を求めた。
常に、その所有者のために決闘で勝たなくてはならない魔法の杖。
「死神」を征服した魔法使いにふさわしい魔法の杖!
それで、「死神」は川の土手のニワトコの木に行って、そこに下がっていた枝から魔法の杖を作って、最年長の兄に与えた。」

ここで、Deathと大文字で書かれると、「死」ではなくて「死神」と辞書には書いてあるし、その様に理解している。
しかし、訳文では『死』なのである。
ここで『死』と訳してしまうと後で出てくる「master of Death」 ‥静山社日本語訳では「死を制する者」が曖昧になる。
「master of Death」とは、死神のマスター(主人)、即ち「永遠の命」ということである。

又、第32章の「The Elder Wand」。
これも一貫して「ニワトコの杖」なのだが、確かに上述の通り「ニワトコ」の枝から作ったものだが、「the Elder Wand」となったら「ニワトコの杖」ではおかしいのではないのだろうか。これもelderとは一般には「高齢者、年長者」の意味だ。
‥‥とすれば、兄弟の年長者の最強の魔法の杖を意味して、単なる「ニワトコの杖」では物語が散漫になる。
しかも、後半では「」も付かないニワトコの杖で表現している。
たとえば、

I`m putting the Elder Wand,‥‥‥

の訳も「僕はニワトコの杖を‥‥」だ。
伝説的なElder Wandはもそんなに軽いものではないと物語を読むと誰でも思うのだが、訳者どう思ったのだろうか。

ちなみに、訳者はあとづけで「児童書」と言い放って、かなり無理な訳も言い逃れする気なのだろうか。
しかし、原書はアダルト版と児童書版とあるのだが、中身は一緒だ。
それにしても、何か日本語訳を読むと全く面白くない。
なんと言っても毎度言うように情景が浮かんでこない。

原作者ローリングは風景を描くとき、この小説に出で来る情景を過去の映画の一シーンの一部を切り取ったような風に書いている。
そんな状況が思い浮かべば、本当にイメージが膨らむものだ。
しかし、平易な日本語文に変えられたら何も分からないと言うものではないか。

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2008年8月19日 (火)

ハリー・ポッターと死の秘宝 日本語版への疑問  その1

ハリー・ポッターと死の秘宝 日本語版への疑問  その1

「ハリー・ポッターと死の秘宝」の静山社による日本語版を読まれた人も多いだろう。
日本語版が発売されてそろそろ1ヶ月経つ。小生もネットショップに予約していたから発売日の朝、宅配業者から本が届いた。
発売されて読みたくて直ぐに読んだかと言うと、梱包を解いて中身を確認したまま実は「積ん読」であった。なぜなら、既に原書「Halley Potter and the Deathly Hallows」は読了していたからである。
日本語の題の「死の秘宝」と言うのも妙な題だとそのうち考えて行くが、まず日本語版を読み進めて行くと「あっという間」に読めてしまうものである。しかし、残るのはスジだけ。その小説の情景というものがさっぱり浮かんでこない。だから映画になって「ああ~あんな状況なのか」と改めて再確認するという馬鹿な事が起こる。
それでなぜ読者のイメージが膨らまないのかとここで少し重箱の隅を突いてみたいと思う。
その重箱の隅の隅は、第一章「The Dark Lord Ascending」日本語版「闇の帝王動く」から。まず、ルシウスの大豪邸の表現。
原書では「handsome manor house」これを「瀟洒な館」と表現している。
確かに間違いない訳なのだが、本文でも分かるように「館」とは英国で見られるように貴族の城と言うものである。普通辞書を引けば「manor house」とは「領主の館」と言うもので普通の民家とは別物である。日本人なら英国貴族の城とは想像せず飛ばしてしまうかも知れない。
次に、時間いっぱいに到着する二人のDeath Eaterに対して、「遅い、遅刻すれすれだ」と闇の帝王が発言する。
しかし、原書では「You are very nearly late.」と如何にも貴族じみた言葉で、粗野な言葉遣いをしていない。実はそう言う貴族階級の実に嫌みったらしい言葉遣いが帝王の凄みを感じさせている。
そんな感じて、第三章のダーズリー家のバーノンおじさんのイライラ感が伝わってこなかったし、色々な重要ポイントで外すのはどういう事なのだろうか。
例えば、第7章「アルバス・ダンブルドアの遺言」でジニーとのラブシーンがある。この小説の唯一のラブシーンなのだが(実はもうひとシーン有)、前提の結婚式の準備の喧噪・誕生日の慌ただしさが背景になってここが成立する。
そこで変なのが「ミラマンのマジック幕‥‥‥とってもいいテントよ。以下略‥‥」と言う部分の訳。原文は「Millamant`s Magic Marquees」要するに今で言う宴会専門業者というもの。せめて「ミラーマン・魔法テント社」ぐらいの表現ならよく分かる。
そして、ジニーとのラブシーンでの最高潮の部分。
「私、そういう希望の光を求めていたわ」
原文は、「‘There’s the silver lining I’ve been looking for,’she whispered」で非常に素晴らしい表現なのである。実は、Every cloud has a silver liningという英国のことわざから来ているフレーズで単に「希望の光」ではないことがわかる。
日本語版では、短縮してしまったために、ジニーがハリーと別れるのに悲しくしようがない意味合いが薄れている。
実は、小生も最初「そこには、私が探し求めていた『明るい希望』があるのね。」と訳したが、やはり「そこに一縷(いちる)の『明るい望み』があるのね、私、それを探していたの」の方が情感がこもる。
ここの部分を原文に当たって訳していたので日本語版から見ると「つたない訳」だが、雰囲気を分かって欲しい。
…………………………………………………………………

「ハリー、ちょっとの間、ここに来ない?」それは、ジニーだった。
ロンは、突然止まった。しかし、ハーマイオニーは、ひじで突いて彼を連れて行って、
2階までロンを引っ張っていった。

ビクビクした感じで、ハリーは、ジニーの後について彼女の部屋に入った。
彼は、以前にも一度もその中に入ったことはなかった。
そこは、小さく、しかし明るかった。

壁には、魔法使いバンド「ウィード・シスターズ」の大きなポスターがあった。
他には、全魔女クィディチ・チーム「ホーリヘッド・ハーピーズ」のキャプテン、グエノグ・ジョーンズの写真。
机は、果樹園に面した開いた窓に面して置いてあった。
そこでは、ハリーとジニーは、クィディチでロンとハーマイオニーと両側に分かれて一回対戦したことがあった。そして、そこには、今や大人数を収容する真珠のような白い大きなテントがある。
てっぺんの金色の旗は、ジニーの窓の位置まであった。

ジニーは、ハリーの顔を見上げて、深呼吸して言った。
「17歳、誕生日おめでとう。」
「いゃ~ ありがとう」

彼女は、彼をなめいるように見ていた。しかしながら、ハリーは、彼女に振り返る事は難しかった。それは、まぶしいライトを凝視するようだった。

「良い眺めだ。」彼は、窓の方を指し示しながら弱々しく言った。
彼女は、これを無視した。彼は、非難は出来なかった。

「私、あなたに上げるものを考えることが出来なかったわ」と彼女が言った。
「君は、僕のために何も手に入れなくても良いのだよ。」
これも、彼女は同じく無視した。
「私、どんなものが有用なのか分からなかった。あまりに大きくないもの、なぜなら、あなたがそれを持って行くことが出来ないであろうから。」

ハリーは、彼女をちらりと盗み見た。

彼女は、涙ぐんでいなかった。それは、ジニーに関して、多くのすてきなことの中の一つだった。 彼女は、滅多に泣き虫でなかった。

ハリーは、6人の兄弟を持っていることが彼女を強くしたに違いないと、時々思っていた。
彼女は、ハリーに、より近くに近づいた。

「それで、それから私、考えたの。私を覚えていて欲しい何かをあなたにもって欲しいって。あなたが行動しているどんなときでも、あなたが休んでいるときも、もし幾人かの『ヴィーラ』に出会ったときでも、あなたには覚えていて欲しいの。」

「僕は、デートしている機会なんて、ほとんどあり得ないだろうと思うよ。正直なとこ。」
「そこに一縷(いちる)の『明るい望み』があるのね、私、それを探していたの‥‥」彼女はささやいた。

そして、それから、彼女は前にハリーに一度もキスしたことがなかったように、彼女はハリーにキスをした。
そして、ハリーは彼女にキスを返した。
それは、ファイヤー・ウィスキーを越える幸せに満ちあふれた、忘却の状態だった。

彼女は、世界中で唯一の現実のものだった。ジニー、彼女の感触、彼女の背中の手、彼女の長い、甘く臭う髪。
彼らの後ろのドアが、バタンと音をたてて開いた。
とたん、彼らは飛び退いて離れた。
「おぅ、ごめんな」とロンが鋭く言った。
「ロン!」

………………………………………………………………………
ハリーというのは、少し内向的で皮肉屋の面がある。
このシーンではハリーは照れくさくて、部屋中を眺め回し窓から外を見ていて、中々ジニーに目を合わせようとしない。別のシーンで見つめ合ったりしているのにである。
‥‥そんな雰囲気を出して訳出した。
実は、「found it difficult to look back at her」をどう訳すかで多少意味が違ってくる。
look backは、辞書で調べると「振り返る・振り向く」で「見返す」という事は書いて無かった。
日本語版では、「見つめ返す」の表現になっている。
以下原文‥‥

‘Harry,will you come in here a moment?’It was Ginny.
Ron came to an abrupt halt,but Hermione took him by the elbow and tugged him on up the stairs.Feeling nervous,Harry followed Ginny into her room.
 He had never been inside it before.It was small,but bright.There was a large poster of the wizarding band the Weird Sisters on one wall,and a picture of Gwenog Jones,Captain of the all witch Quidditch team the Holyhead Harpies,on the other.A desk stood facing the open window which looked out over the orchard where he and Ginny had once played two-a-side Quidditch with Ron and Hermione,and which now housed a large,pearly-white marquee.The golden flag on top was level with Ginny’s window.
 Ginny looked up into Harry’s face,took a deep breath and said,
‘Happy seventeenth.’
 ‘Yeah...thanks.’
 She was looking at him steadily;he,however,found it difficult to look back at her;
it was like gazing into a brilliant light.
‘Nice view,’he said feebly,pointing towards the window.
 She ignored this.He could not blame her.‘I couldn’t think what to get you,’she said.
‘You didn’t have to get me anything.’She disregarded this too.‘I didn’t know what would be useful.Nothing too big,because you wouldn’t be able to take it with you.’
 He chanced a glance at her.She was not tearful;that was one of the many wonderful things about Ginny,she was rarely weepy.He had sometimes thought that having six brothers must have toughened her up.She took a step closer to him.‘So then I thought,I’d like you to have something to remember me by,you know if you meet some Veela when you’re off doing whatever you’re doing.’
‘I think dating opportunities are going to be pretty thin on the ground,to be honest.’
‘There’s the silver lining I’ve been looking for,’she whispered,and then she was kissing him as she had never kissed him before,and Harry was kissing her back,and it was blissful oblivion,better than Firewhisky;she was the only real thing in the world,Ginny,the feel of her,one hand at her back and one in her long,sweet-smelling hair.
 The door banged open behind them and they jumped apart.
‘Oh,’said Ron pointedly.‘Sorry.’
‘Ron!’

それにしても、上巻の中で最も酷いものは「Trace」と「Deluminator」に尽きるのではないかと思う。
「Trace」は、日本語版では「臭い」と表現する。
Traceこれは「未成年者魔法・追跡魔法」とでも言うべきもので「臭い」という表現では違和感がありすぎないかというものだ。Tracerには曳光弾という意味があって、臭いではおかしい。単に「追跡魔法」でも良かったのではないか。
「Deluminator」は、ロンが貰ったダンブルドアからの遺産。
これを単に「灯消しライター」と訳してしまうところに何やら、軽薄感がある。
なぜなら、第1巻で違う表現で出ているからだ。
その他、ロンが下品な言葉を散々放つが、「Merlin`s ‥‥‥」の部分で最初はそれなりの「言葉」の表現だったのが、その後いきなり「マーリン‥‥」が出てきても何を言っているのか分からないだろう。
Merlinというのは、英国アーサー王時代の魔法使いで、知っている人は知っていても何を意味するのか分からぬというもの。
下品な言葉だから、どうでも良いと言うものではない。

こう書くと大した事ではないと思うかも知れない。しかし、全般的にこんな調子で訳されると原文の良さが伝わってこない。
当たらずとも遠からずの訳ではあるが、日本語版は、大方細部を省略して単純な言葉にしてしまっている様な気がする。

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